珍しく承った芽ばえの二葉を、私風情(ふぜい)が関心を持つとは申されませんが、

命あらばそれとも見まし人知れず岩根にとめし松の生(お)ひ末

 よく書き終えることもできなかったような乱れた文字でなった手紙であって、上には侍従の君へと書いてあった。蠹(しみ)の巣のようになっていて、古い黴(かび)臭い香もしながら字は明瞭(めいりょう)に残って、今書かれたとも思われる文章のこまごまと確かな筋の通っているのを読んで、実際これが散逸していたなら自分としては恥ずかしいことであるし、故人のためにも気の毒なことになるのであった、こんな苦しい思いを経験するものは自分以外にないであろうと思うと薫の心は限りもなく憂鬱(ゆううつ)になって、宮中へ出ようとしていた考えも実行がものうくなった。母宮のお居間のほうへ行ってみると、無邪気な若々しい御様子で経を読んでおいでになったが、恥ずかしそうに経巻を隠しておしまいになった。今さら自分が秘密を知ったとはお知らせする必要もないことであると思って、薫は心一つにそのことを納めておくことにした。
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薄紅梅

桜の色の細長に、山吹(やまぶき)などという時節に合った色を幾つか下にして重なった裾(すそ)に至るまで、どこからも愛嬌(あいきょう)がこぼれ落ちるように見えた。身のとりなしにも貴女(きじょ)らしい品のよさが添っている。もう一人の姫君はまた薄紅梅の上着にうつりのよいたくさんな黒々とした髪を持っていた。柳の糸のように掛かっているのである。背が高くて、艶(えん)に澄み切った清楚(せいそ)な感じのする聡明(そうめい)らしい顔ではあるが、はなやかな美は全然姉君一人のもののように女房たちも認めていた。碁を打つために姉妹(きょうだい)は今向き合っていた。髪の質のよさ、鬢(びん)の毛の顔への掛かりぐあいなど両姫君とも共通してみごとなものであった。侍従が審査役になって、姫君たちのそばについているのを兄たちがのぞいて、
「侍従はすばらしくなったね。碁の審査役にしていただけるのだからね」
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 秋風らしい風の吹き始めるころからは法事の仕度(したく)のために、院のお悲しみも少し紛れていた。あれから一年たったかとお思いになると呆然(ぼうぜん)ともおなりになるのである。命日である十四日には上から下まで六条院の中の人々は精進潔斎して、曼陀羅(まんだら)の供養に列するのであった。例の宵(よい)の仏前のお勤めのために手水(ちょうず)を差し上げる役にあたった中将の君の扇に、

君恋ふる涙ははてもなきものを今日をば何のはてといふらん

 と書かれてあったのを、手に取ってお読みになってから、院がまたその横へ、

人恋ふるわが身も末になりゆけど残り多かる涙なりけり

 とお書き添えになった。
 九月になり被綿(きせわた)をした菊を御覧になって、

もろともにおきゐし菊の朝露もひとり袂(たもと)にかかる秋かな

 と院はお歌いになった。
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西の妻戸

「とんでもない。私に隠しだてをなさる必要はない。今朝(けさ)後夜(ごや)の勤めにこちらへ参った時に、あちらの西の妻戸からりっぱな若い方が出ておいでになったのを、霧が深くて私にはよく顔が見えませんじゃったが、弟子(でし)どもは左大将が帰って行かれるのじゃ、昨夜(ゆうべ)も車をお返しになってお泊まりになったのを見たと口々に言っておりました。そうだろうと私もうなずかれました。よい匂(にお)いのする方じゃからな。しかしこの御関係は結構なことじゃありませんなあ。あちらがりっぱな方であることに異議はないが、しかしどうも賛成ができん。子供でいられたころからあの方の御祈祷(きとう)は御祖母の宮様から私が命ぜられていたものじゃから、今も何かといっては私に頼まれるのですがな、そのことはよくありませんな。奥さんの勢力が強くてしかたがない。盛んな一族が背景になっていますからな。お子さんはもう七、八人もできているでしょう。こちらの宮様がそれにお勝ちになることはできないでしょうな。また一方から言えば女という罪障の深いものに生まれて、救いのない長夜の闇(やみ)に迷うのもこうした関係から生じる煩悩(ぼんのう)が原因になり、恐ろしい報いを受けることになりますからな、長い絆(きずな)が付きまとわることですからな、絶対によろしくないことじゃ」
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供養

 故大納言の父母は涙の晴れ間もないほど悲しみにおぼれて暮らしているのであって、日のたつ数もわからなかった。法事などの用意も子息たちや婿君たちの手でするばかりであった。供養する経巻や仏像も二男の左大弁が主になって作らせていた。七日七日の誦経(ずきょう)の日が次々来るたびに、その注意を子息たちがすると、
「もういっさい何も聞かせないようにしてくれ。あれに関した話を聴(き)けばまた悲しみが湧(わ)くばかりだから、かえってあれの行く道を妨げることになる」
 と言うだけで、大臣も死んだ人のようになっていた。
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